今回紹介するのは『カイジ「命より重い!」お金の話 [ 木暮太一 ]』です。
『カイジ』は自堕落な日々を過ごす主人公がギャンブルの世界にのめりこんでいくという人気漫画です。
藤原竜也さんで映画化もされています。
本書はカイジの経験を通して現実社会に活かすにはどうすれば良いのかを考える内容になっています。

僕が本書を読んで実践していること、意識していることを5つ取り上げました。詳しく見ていきましょう!
1円の価値
お金を使えば使うほど、1円が”軽く”なる(P81)
1円が軽くなるというのはどういうことでしょうか?
例えば車を買うケースです。
普段は1万円を超える商品は高いと思っているのに、セールスマンにオプションを勧められて1万円以上のものを簡単に追加してしまったことはないでしょうか。
このように同じ1万円だとしても、使うお金の額によって1円の価値が変わってきます。
この感覚に身を任せていると、お金を使う度に、”もっと使うこと”が簡単になり、浪費癖が加速していく(P82)
マーケティングには心理的財布という用語があります。
人の消費者が所持している財布が一つであっても、購入する商品の種類ごとに心理的に複数の財布を持っているという概念である
車の例でいうと車を買う用の心の財布には300万円入っているとします。
日常の買い物で使う心の財布には1万円入っているとします。
この時、300万円入っている方の財布の1円の価値は日常で使う財布の価値より300分の1になっているとも考えられます。
それくらい1円の価値が暴落しているのであれば、浪費してしまうのは仕方がないような気もしますね。
世の中や私たちの思考は、浪費を加速させるようにできています。
今こそそのことに気づき、真実の豊かさを追求するかしこい消費者になるべきなのです。(P93)
宝くじは最低のギャンブル
もっとも馴染みのある「宝くじ」は、期待値がもっとも最低のギャンブル(P152)
私たちの身近なギャンブルとして、競馬、競輪、宝くじ、ロト6、パチンコ、スロット、などがあります。
本書では以下の計算式で期待値を算出しています。
勝ったときにもらえる金額 × 勝つ確率(P150)
この計算式で出された確率で一番低いのが宝くじとロト6なのです。
宝くじにあたる確率は隕石にあたって死亡する確率より低いと聞いたことがないでしょうか?
参考サイトによると、年末ジャンボの1等の当選確率は1000万分の1、隕石にあたって死亡する確率は160万分の1になっています。
参考:夢が壊れる?宝くじの1等当選確率を種類別に計算してみた結果
参考:宝くじより高い? 隕石に当たって死亡する確率
宝くじは1枚300円ですので30億で1000万枚買うと1等に当たる計算になりますね。
当選金額より支払金額の方が多くてそんなことする人はいないでしょうが…
さらに宝くじが怖いところは、当選して一度に大金を手にしてしまうと、簡単に生活水準をあげてしまえることです。
生活水準を下げるのは耐えられない!(P84)
”まだあるから”とお金を使い続けているとすぐに無くなってしまうのですが、無くなったからといってこれまでの生活をやめることができず、消費者金融に手を出して破産してしまう…
宝くじ当選者が破産したという話をテレビでやっていたりしますが、このような仕組みになっています。
夢を買うとも言われますが、夢は夢でも悪夢ですね。
お金をはらって悪夢を買うとはなんとも喜劇的ではあります。
リボ払いの罠
返済がなかなか終わらない!?”リボ払い”の罠(P118)
本書を読んでリボ払いの仕組みを理解するのがマネーリテラシーをアップさせる近道になると思いました。
クレジットカード会社が何で一番儲けているかご存知でしょうか?
本書の中で紹介されている収入内訳ではなんと5割弱がキャッシング(P117)となっています。
クレジットカードに付帯しているキャッシング機能を使って、ATMなどでお金を借りること
今はお金が簡単に借りられるようになりましたね。
キャッシングのCMもテレビでは見ない日が無いほどに流れています。
その中でも特にクレジットカード会社が勧めてくるのがリボ払いです。
入会時の特典やポイント還元率が高くなっていたりするので一見お得なようにも見えます。
ですが、リボ払いには怖い罠が仕込まれているのです。
渋谷の若者はテレビの取材でリボ払いについては次のように答えたそうです。
「毎月、同じ金額だけ払っていればいいから、とくに気にならない」(P119)
リボ払いをまるで給与天引きのようなものだと認識していたのです。
知らないとはなんて怖いことなのだとこの言葉を聞いて思いましたね。
給与天引きとの最大の違いはお金を借りると利子がつくことです。
リボ払いは元利均等返済と呼ばれる返済額(元金+利息)が一定になる方式を採用しているのですが、この方式ですと期間が長くなるほど支払う利子が増えていくのです。
利子だけを払い続けて、いつまでたっても返済が完了しないなんてことにも…
クレジットカード会社にとっては返済期間をいかに長くするかが重要になってくるのです。
リボ払いはまさにぴったりの商品ですね。
最悪の事態に備える
多くの人は”うまくいくこと”しか考えていません。(P201)
ある行動がうまくいったとして、その次もうまくいった。
そのような成功体験が積み重なっていくと、失敗した時のことを考えなくなります。
うまくいかなくなったとしても、その時だけのことだと考えてしまい、過去に成功したパターンに固執してしまうのです。
僕の昔話をします。
FX(外国為替証拠金取引)という取引をやっていた時のことです。
本などで勉強してある成功パターンを見つけて、それを繰り返して資産を倍にすることが出来たことがあります。
この時は僕ってもしかしてこっちの才能があるのでは?と思ったりもしました。
為替の怖いところはたまに相場が大幅に下がったりするのです。
FXは自分のお金を証拠金としてより大きなお金を扱うことができます。
そのため、リスクも大きいのですが、リターンも大きいのです。
ここまでくればお分かりかと思いますが、調子に乗っていた僕は一夜にして資産が0になってしまい、頭が真っ白になるという経験をしました…
人生では、勝負を続けられることが一番大事(P204)
最悪の事態を想定し、そんな事態に直面してもなお”負け”を防ぐ策が必要(P203)
人を救ってきたのはお金ではない
西原理恵子さんの『この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫) [ 西原理恵子 ] 』 に”いちばん大事な”フレーズがありました。(P229)
『エサをもらって生きる』だけじゃ牛や馬と同じになってしまう。人でなくなってしまう。『働ける場所がある』ってことが、本当の意味で、人を『貧しさ』から救うんだと思う。
僕もこの考え方に大賛成です!
僕は一時期、お金をたくさん稼いで、早々にリタイアして生活することを夢見ていました。
その考えに影響したのが「改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 [ ロバート・キヨサキ ]」です。
他にも色々読みましたが、きっかけはこの本です。
そのために、株やFX、ワンルームマンションを購入してみたり…
失敗を積み重ねて、ふと思ったのが、大金を手にした後どうしたいのか?ということでした。
結局のところ、大金を手にしてリタイアしたいのではなく、今の会社で頑張った先に豊かな未来を想像できなかったからというのが根本的な原因であることに気づいたのです。
新約聖書にも「人はパンのみにてい生くる者に非ず」とあります。(P230)
お金は大事です。
でも、お金だけ渡しても問題は解決しません。
仕事が人を救うのです。(P230)
ベーシックインカムという制度をご存知でしょうか?
最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。 基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障、国民配当とも、また頭文字をとってBI、UBIともいう。
例えば国民全員に一律20万円支給するからあとは自己責任でがんばってね!と言われたらどうしますか?
フィンランドやカナダで実験をしていますが、どれも計画は打ち切りになっています。
人々が欲しいのはお金ではなく、日々の安心だということがよく分かる事例ではないでしょうか。
書評まとめ『カイジ「命より重い」お金の話』木暮太一
『カイジ「命より重い」お金の話』いかがでしたでしょうか?
僕は自分がいくら稼いでいるかということは、友達にも話したことはありません。
いくら使ったかという話はしたことがあります。
ですが、Twitterの世界ではいくら稼いだということを堂々とつぶやいている人が大勢います。
そして、いくら使ったかというつぶやきはほとんど見かけません。
お金の話題というのは世界が変わるだけでこんなにも違うんですね。