今回紹介するのは『君たちはどう生きるか [ 吉野源三郎 ]』です。
著者である吉野源三郎さんは児童文学者です。
そのため、本書は本来、子供たちに向けた哲学書であり、道徳の書なのです。
色々な経験をしてきた大人だからこその気づきもたくさん見つかると思います。

僕が本書を読んで実践していること、意識していることを4つ取り上げました。詳しく見ていきましょう!
真実の経験について
絵や彫刻や音楽の面白さなども、味わってはじめて知ることで、すぐれた芸術に接したことのない人にいくら説明したって、分からせることは到底できはしない。(P59)
僕はBiSHというグループが好きなのですが、好きになったきっかけはアメトーークでした。
それまでBiSHというグループを知らなかった僕は、いつものようにお笑いを見るつもりで見ていたのですが、芸人たちの熱いトークにどんどん惹かれていったのです。
さて、ここで面白かったで終われば、そこで終わりです。
それ以上発展することはないでしょう。
そこから更に深堀したり、その音楽を実際に聞いてみたり、メンバーのTwitterを確認してみることで番組内で話していた内容が自分の知識として息づいてくるわけです。
例えば相田みつをさんの名言に「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」というものがあります。
解説にはこのように書かれています。
人間は失敗する。その能力に限りがあるからである。また、人間は挫折する。夢やあこがれを抱く存在だからである。失敗も挫折も、それは人間である証なのだ。だれもがそれをくぐり抜けて成長するのである。相田みつをは、「人間にとっていちばん大事なものは、学歴でも肩書きでもお金でもありません。丈夫な身体と健康なこころ、これが最高の宝です」ともいっている。
引用:JLogos
この名言を誰かに伝えるとしたらあなたならどのように伝えるでしょうか?
解説の通り説明したとしても、きっと文章の意味は理解はしてくれるでしょう。
ですが、本当の意味で何を伝えたいのかを納得することはないのではないかと思います。
理解と納得は違うのです。
僕であれば、病気ですべての髪の毛が抜けてしまった経験からこの言葉の意味がよく分かります。
どん底に落ちて絶望するのも人間。
でも、そこから立ち上がって前へ進むことが出来るのも等しく人間なのです。
いろいろな経験を積みながら、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなさい。(P64)
知識を本当の意味で理解できるのは、様々な経験があって、自分の声に向かい合ったときなのだと思います。
本当の発見について
いろいろな学問は、人類の今までの経験を一まとめにしたものといっていい。
そして、そういう経験を前の時代から受けついで、その上で、また新しい経験を積んできたから、人類は、野獣同様の状態から今日の状態まで、進歩することができたのだ。(P103)
人類の英知がどれだけすごいものなのかを知りたければ、「Dr.STONE」か「JIN -仁-」を見るのが良いでしょう。
医療では当たり前になっている抗生物質。
抗生物質と言えば、簡単にいうと細菌を退治するための薬です。
「JIN -仁-」ではペニシリンで感染症から、
「Dr.STONE」ではサルファ剤で肺炎から人々を救っています。
これらの抗生物質が登場したことで医療は劇的に発展したのです。
一人一人の人間が、みんないちいち、猿同然のところから出直したんでは、人類はいつまでたっても猿同然で、決して今日の文明には達しなかっただろう。(P103)
だからこそ、次へつなげるために僕たちは学問を修めなければならないのです。
2020年4月、コロナで世間が混乱する中で、嬉しいニュースが飛び込んできました。
数学の超難問「ABC予想」を京大の教授が解き明かしたというものです。
論文が2012年に発表されて、受理されるまでなんと8年!
それだけの世界にとっての超難問だったのでしょう。
人類は着々と進歩していっているのです。
偉大な人間について
僕たちがナポレオンの生涯を見て感嘆するのは、そのすばらしい活動力のせいだという、この一事を、君たちは決して忘れてはいけない。(P194)
ナポレオンで有名なのは「私の辞書には不可能という文字はない」ですね。
24歳当時のナポレオンはは貧乏将校でした。
そこから圧倒的な戦争の強さによりヨーロッパの大半を支配下におき、35歳で皇帝にまでのぼりつめます。
まさに下剋上!
記録に残っている戦績は38勝3敗。
参考までに「はじめの一歩」の主人公、幕ノ内一歩の戦績は23勝3敗です。
ボクシングと戦争では全然違いますか…
英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬できるのは、人類の進歩に役だった人だけだ。
そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打ちのあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ。(P203)
ナポレオンが強さだけの人であればここまで偉人として有名になることはなかったかもしれません。
では、ナポレオンが真に人類の進歩に役だったこととは何か?
当時のフランスは腐りきった封建制度でした。
君主の下にいる諸侯たちが土地を領有してその土地の人民を統治する社会・政治制度
イメージとしては時代劇に出てくる悪代官ですね。
それを打倒するため血みどろになって努力し、新しい世の中の秩序を作ったところにあります。
新しい秩序を法律に定めた「ナポレオン法典」は明治維新後の民法の模範にもなったほどです。
人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。(P206)
この一文は多くの大人に刺さるのではないでしょうか。
詳しいは解説は省きますので是非ともどのような意味なのかを考えていただきたいです。
苦痛について
からだに痛みを感じたり、苦しくなったりするのは、故障ができたからだけれど、逆に、僕たちがそれに気づくのは、苦痛のおかげなのだ。(P267)
痛みが伴うから、人はそれに気づいて改善しようします。
虫歯になって歯が痛いから、歯医者が怖いから、今度からきちんと歯磨きをしよう。
食べ過ぎて太ってしまい、鏡をみてショックを受けたから、好きな人に嫌われたから、今度から運動をしよう、食べ過ぎないようにしよう。
そもそも、人は何もできない状態で生まれてきます。
何もできない状態の赤ちゃんから数々の失敗をしてきて、今のあなたがいるです。
人間が、こういう不幸を感じたり、こういう苦痛を覚えたりするということは、人間がもともと、憎みあったり敵対しあったり、すべきものではないからだ。
また、元来、もって生まれた才能を自由に伸ばしてゆけなくてはウソだからだ。(P296)
人類の英知である学問を学び、経験から学びを自分のものにし、人類の進歩に役立つように活動していく。
その過程では苦痛を伴う辛いこともあるでしょう。
ただそこにはいまだ人類が気づいていない、あなただけが気づいた新しい知識があるかもしれません。
そのような知識を汲み出していかなければいけないのです。
それこそが新しい人類の進歩につながるのですから。
書評まとめ『君たちはどう生きるか』吉野源三郎
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